研究内容

現在取り組んでいる研究テーマ

光通信デバイス研究室では、6Gやそれ以降の高速・大容量・安全な光通信を支える光デバイスの研究開発に取り組んでいます。特に実現が非常に難しいと考えられている、半導体基板に集積可能な光量子メモリや微小レーザの実現を目指します。これら研究テーマの詳細を以下で紹介します。

 

通信波長帯光量子メモリの開発
現在、世界的にインターネットの量子化(量子インターネット:状態の重ね合わせや量子もつれ等の量子力学的効果を用いた秘匿性の高い通信のこと)の実現に向けた研究が盛んにおこなわれています。量子インターネットでは従来の光ファイバーネットワーク網を利用するため、通信波長(波長1.5マイクロメートル)の光一粒(単一光子)に情報を乗せて通信を行いますが、伝送距離が長くなるとその情報が失われてしまいます。そのためネットワーク上に「量子中継器」の配置が必要になります。この中継器は「光量子メモリ」を中心に構成されますが、現在実用的な光量子メモリが実現できていません。
私たちの研究室では、特殊な結晶(希土類稀薄添加結晶)を極低温に冷却することで、この光量子メモリの実現を目指しています。この結晶ではこれまでに10マイクロ秒以上の時間、通信波長の光の量子状態をメモリすることに成功しています。現在様々なメモリ動作原理の適用や結晶材料の最適化を行い、メモリ時間をさらに100倍程度長くすることを目標に研究に取り組んでいます。
参考文献:
T. Tawara et al., APEX 10 (2017) 042801.
M. Hiraishi et al., Opt. Lett. 44 (2019) 4933.
S. Yasui et al., Opt. Express 29 (2021) 27137.
通信波長帯微小光源の開発
これまで集積回路(LSI)に搭載される部品数は、2年ごとに2倍に増えるという「ムーアの法則」に従って集積度をあげてきました。しかし近年、集積度をこれ以上あげても電気抵抗が上がってしまいLSIの性能が頭打ちになる可能性が出てきました。そこで現在世界的に研究が進められているのが、LSIの光化(光集積回路、シリコンフォトニクス)です。これはシリコンチップ上に光源、変調器、光合波/分波器、検出器など様々な光素子を集積する必要があります。しかしシリコン自体は発光しない性質のため、光源(微小レーザや単一光子発生器)の実現が難しいという問題があります。
私たちはこれまで髪の毛の1/100程度の太さしかない化合物半導体ナノ構造(半導体ナノワイヤ)を用いた通信波長帯光源を実現してきました。半導体ナノワイヤは、シリコンチップ上に高品質かつ高い位置精度で高密度集積を可能にすると期待されています。私たちはこの半導体ナノワイヤをシリコンフォトニクス用の高効率な通信波長帯光源としての実現を目指しています。現在はナノワイヤ構造の最適化によるレーザ特性の向上とその発光特性の解明に取り組んでいます。
参考文献:
G. Zhang et al., Science Advances 5 (2019) eaat8896
G. Zhang et al., Jpn.J.Appl.Phys. 59 (2020) 105003.